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環境作りにハイブリッド予算を
建築家 菊竹清訓
<生活環境の再建は急務>
経済低迷の脱却に構造改革論が活発であるが、そこ に抜けているのが環境づくりの方法である。環境をどう変えていくかの直面する問題に、多様な文化の蓄積や歴史の厚みを思い出して、日本の将来に向かっての環境ビジョンをつくりあげることが必要である。日本の輸出型産業を、内需型に転換することを海外から求められているが、資源のない我が国は輸出型産業で戦後の高度成長を成し遂げ、経済大国になったので、急に内需型といわれても、産業優先で生活産業の全般に気を配ってこなかったことから、転換は容易ではない。
しかし、経済改革を行おうとすれば産業構造の変革にとりくまざるを得ない。そこで軸となるのが「環境づくり」であり、その公共事業であろう。なぜなら環境づくりこそ内需型の産業だからである。バブル期と違って経済不況は、この転換にとって好機といえる。都市の居住環境の荒廃は、目に余るものがある。途上国の援助や支援ばかりはしていられないほど深刻で、これは山林や農業環境にも同時に起こっていて、都市を中心とした国土全体の生活環境の再建に、経済を集中して解決すべきである。いつまでも改善されない過密や通勤地獄、交通事故、狭小な住宅、高い家賃、災害危険など、未解決の課題が環境づくりには山積していて国家の再建の気力を失わせる。
<私的・公的計画のズレ>
ところが、環境への取り組みにただ波及効果や速効性があるからといって、このままでは公共事業のやり方がまずい。環境破壊の最大のネックは、私的計画と公的計画のズレやアンバランスにある。そのため、開発が進むほど乱雑な環境になっている。この自己矛盾の環境づくりのまずさを何とか是正する公共事業に切り替えねばならない。
それには、私的計画と、公共共通の都市基盤の二つをハイブリッド化して考えることである。例えば、道路と建築を一緒に作るというようなことであり、建設と運輸・通産の一体的な事業を新たにおこして、これに予算を付けるようにしていくことである。道路と一緒に住居を考え、パーキングをとり、公共施設を作り、生活に必要なショッピング施設を取り、さらに屋上を緑化して、健康ジムや、神社等をつくるという、つまり総合的環境をつくるように、都市改造を行えば、実りあるものになっていく。
用地問題や。権利調整など厄介な手続きもあるが、合意を創り出すための規制緩和や資金・税制などの支援をすることで促進を計る。これまでに進められている道路整備も、道路だけを拡張するだけでなく、歩者分離のための立体化を考え、ハイブリッド環境に持っていく必要がある。同時に共同溝や地価パーキングを加え、高速道路と、地下鉄、JR等とのジョイント駅を作るなど、一体化して都市生活の合理化を進め、緑化で潤いを生み出すような小さな工夫を幾つも積み重ねて、はじめて住み良い環境が実現できる。
<住宅と都市基盤の一体化>
そのためには、縦割りの省庁の壁を越えて、相乗りの新しい体制での予算化が必要で、これを機に縦割り行政の無駄や重複を改善すべきである。実施も単年度原則から三年以上のゆっくりとした継続事業として、本格的な美しい豊かな環境づくりを、みんなで少しずつ実現できるようにする事が、環境づくりの原則で就業機会を増やし、内需拡大にも貢献できる。
大都市の都心では空間の立体利用による高層住宅の需要が高まっているが、これは若年層だけではなく老齢化社会でも必要だという意識変化によるもので、ショッピング施設や病院、教育・文化・公共施設の利便性、および防災上の安全性や、ライフラインの確保など都市生活の快適性が問い直されているためである。環境づくりの基本となる住宅も都市基盤と一緒に作るようにしなければ住宅の質は良くならないことがやっと分かってきた。
かつて質のいい住宅を適切なコストで合理的に供給しようという、住宅工業生産についての沢田光英氏の研究や内田元享氏の住宅産業論があり、そこで我が国の経済成長で重要だと述べられてきたが、環境にとって大きな変化は都市住宅が今新しい話題になっている。プレハブ住宅だけでなく、都市基盤と一緒に作るハイブリッドの高層立体都市や多層の人工地盤が浮上してきている。住宅と都市基盤を一体的に考えなければ日照・通風・換気・排水、ゆとりのある緑地をもった環境はつくれない。
その上でやがて枯渇するエネルギー資源のことを考えたソーラーパネルの利用、又雨水利用の供給システム、そして情報・通信システムなどを加え、心をなごませる住宅を取り戻したい。
そして、いよいよ持てる資源を以下に大切に活用し、巨大ゴミ処理を考え循環再利用の道を開く環境システムをどう目指していくか考えなければならない。文化・産業・社会・技術が一緒になって作る、魅力あるハイブリッド環境に向けての公共事業への取り組みに「環境づくり」のハイブリッド予算が求められている。
産経新聞「正論」1999年7月5日
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