「都心再生」を国家目標に据えよ
現代版城下町づくりで大改造のとき

≪徳川幕府の繁栄から学ぶ≫

 徳川幕府が三百年に亘(わた)って安定した文化的繁栄を続けた理由は、その制度上の問題もあるが、中でも強いインパクトを与えたのは、城下町づくりであった。全国二十八の中心都市を大改造し、シンボルに天守閣を据えて、新しい政治が始まったことを、すべての武士・町人の目に見える形で強烈に印象づけた。当時、世界一の経済力を持っていた日本は、この津々浦々に及ぶ巨大土木事業を二十−七十年で達成し、その上、参勤交代で情報システムまで完成したことが大きかったのである。

 今、経済危機を克服するため構造改革を進め、国の再建をなし遂げなければならない。幸い、個人の富の蓄積は千五百兆円にも達し、経済的に恵まれた豊かな状況にある。したがって、これをどう活用して国家の再建に役立てるか。今、国民みんなで考えるべき時期だと思われる。

 政府においても、都市再生本部が設置され議論が始まったことを、私は評価している。この都市再生本部は、何も建設業を応援する機関ではない。これまで年間七十兆円の世界最大規模の産業投資は、国土の建設、都市、道路などインフラストラクチャーの整備に集中する一方、年間百二十万戸の住宅建設がすすめられてきた。

 しかし、残念ながら国民の生活環境は質・量ともに世界一にはなれなかった。それは、総合的環境を作るという目標が明示されなかったからで、私権が公共より強いという、法律の問題があり、税制と連動していないための実効性も少なかった。何より、一般社会が都市の公共的インフラづくりの認識が欠けていたことは否めない。

≪世界各地で進む都心再開発≫

 都心再生については、色々な提案や計画が出されている。しかし、ただ単にコマ切れにビルの高層化をすることでは無論ない。そんなことでは、衰弱しつつある都市を復活させることは出来ない。都市郊外にも未来はない。都心も空洞化しつつある。これを、ITを軸にして再生させようとするのが、都心再生であって、その見本は、ロンドンの都心のバービガン計画があり、また、フランスでいえばデファンスや、現在進められているドイツのベルリン計画がある。さらに、マレーシアやアメリカの新しいITコリドールの計画などがある。

 みんな都市再生の課題は、都心の再開発にあると感じている。国際的競争で、都心に次世代の経済センター、文化センターを取り込んで、都心生活にふさわしい、美しい、ゆとりある環境をどう作るかという未来像に取り組んでいる。わが国の都市の魅力がWEF(世界経済フォーラム)の順位によると三十位を下回ってきていることをもっと深刻に受け止めなければならない。

 都心こそ高齢化社会のモデル的医療環境を整備し、また生涯社会教育で、高い文化的教養を身につけ、音楽、演劇といった芸術面での施設を充実し、時間的ゆとりをもって、皆で楽しみながら、精神的な安定、向上を目指すことで、新しい日本の都心づくりをすすめなければならない。

≪近代化で有利な建設業界≫

 幸いにして、建設産業は地域に密着した地場産業で、かつ関連産業の幅が広く、従事する人口も五百万人に及ぶ巨大産業である。かつて、失業は農村、次が都市の建築で受け止めた。建設産業は関連分野が広い。素材産業から機械産業技術、IT産業まで総合的に全産業が必要で、それらが高度に発展しているのはわが国だけである。これは都心開発競争にも断然有利な条件であろう。

 これまで輸出型の経済産業省主導の産業構造の変革によって、世界一の高度成長を達成した実績がある。これから国土交通省を軸とする環境産業による内需型の産業改変に転換するときがきた。これは、わが国の利点である。

 投資は、環境という都心再生が、最も安全で安定した、しかも最もメリットのある、投資対象である。このことに早く気が付き、都市革命にこぞって参加すべきだ。かつての城下町づくりにかわって、新しく全国五十都市の都心の再生にすぐ取りかからなければならない。これを推進する高い能力を持った人々が、技術者、職人、役人、学者など、これほど充実し、揃(そろ)っている国は他にない。

 このエネルギーと知恵と能力を集中し、目に見える環境作り、都心再生に向けることが急務である。そこから経済回復も構造改革も日本の再生も可能性がでてくると思う。

 都市再生でなく都心再生のシナリオを、至急国家的目標として構築することを、私は期待する。


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