これまで、バブルで建設費は掛け放題、高額であるほど豪華、贅沢、高級と受け取られてきたが、さすがに1980年後半から海外では日本の建築単価は異常で、欧米の2倍にも達していることが話題になってきた。 我が国の産業構造の総合的成果が、環境づくりの中心である年間50〜70兆円に及ぶ、巨大な建築産業を、見事に支えつづけてきたし、建築資材のすべては国産ですみ、鉄、ガラス、セメントから機械設備、機器類、IT、家具、調度まで国内ですべて調達できた。こういう国は他に見当たらない。ところが建築外装のアルミサッシュやガラスは輸入したほうが安いし、木材、石材、タイルから、家具や建具まで海外製品がコスト安になってきた。では、国内生産供給の資材がすべて高額かというと、国際競争にさらされた資材や部品は、鉄をはじめとして決して高くはない。では、土地の価格が高く建築も引きずられて高くなったとか、労務費が高いとする説もあったが、地価が下落しても状況は変わらないので建設メカニズムが疑われはじめるようになった。 こういう時期に中部国際空港ターミナルの工事費削減が報ぜられたのである。もうこれ以上背景の説明は不要であろう。つまり日本の国内価格として流通してきたこれまでの高級指向は、いずれ適正化すべきだったわけで、ターミナルはこの一つの具体的事例にすぎない。冷静にこの事実を関係者は正しくうけとめるべきであろう。 コスト削減の具体的な事項として、ターミナル全体の空間容量の圧縮は極当り前のことで、無駄の多い関西国際空港の前例もあり、空間には適切な高さが確保されればそれでよい。これは基本的に空間容量と表面積の関係で、生物に喩えるなら体温維持に帰着する、熱エネルギーの問題だが、これまで建築では問題にされてこなかった。自然の気候に適応する建築の研究が不十分だからで、空調設備技術の残された今後の課題である。 ここで特に言いたいのは、空港ターミナルの計画は旅客の利便性を最優先にすべきだということである。快適で安全、防災、防犯の対策が第一である。常に旅客の要望に応えて空港は、増改築で絶えず更新する現代建築のモデルと考えられているが、これまで我が国のターミナルは諸外国と比較して、あまり更新せず、逆に複雑化し迷路化する非能率建築の代表の感がある。例えばターミナルの長い通路を移動させられるのがレストランや売店の利権のためというのでは困る。今回、コスト削減では真の利便性や、運営面まで含めて検討されたというが、旅客にとって大変なプラスであろう。 ターミナルのコスト削減から、建設業の体質改善も大いに期待したいが、削減を歓迎する、二つの理由を挙げておきたい。一つは建設産業に本格的なVE導入がはじまったことである。こうしたVEの建築導入は欧米での公共大形建築では常識となっている。 第三者がコストバランスに評価を下し、発注者の意図に沿っているか、建設後の運営やメンテナンス費まで総合的に見て妥当かどうか。費用対効果(コストベネフィット)について問題にしていくことは基本的に賛成である。 二つ目は、VEに対する専門家としての対応であるが、より包括的、総合的技術教育をうけている、日本の国家資格をもった「建築士」は、海外の建築家と違って新しい技術の受け入れに柔軟性があり、スムーズにいくのではないかと思われる。欧米では建築家が計画のリーダーとされているが、我が国ではデザインと技術を一緒に設計者と工事担当者は同列で「建築士」という世界のどこにもない、日本独自の環境づくりの専門家集団として、建築士の役割はアジアや急速発展地域に今後重要になってくると思われる。 日本の建設業界は、恐らく急速に近代化を成し遂げ、国際競争力を発揮し、国内のみならず、周辺諸国や途上国の環境づくりに役立つ大活躍を信じて、私は強い希望と期待をもっている。 |