先端技術と人材の融合が貢献への道

 報道によると、個人の金融資産の総額は千四百兆円にも達するという。この蓄積された資金をどう生かすか。世界の環境問題解決に、次世代のために、役立てる方法を考えるべきではないだろうか。
 その資金はどう使われるか。国土の平和、安全、健康な美しい自然と調和した環境づくりに生かすことを考えたい。それには歴史文化の基盤と、いろいろな産業の総合的結集がぜひとも必要である。
 また広く海外の環境づくりでは、先端諸産業や教育、医療の近代化、農水産業などの支援がある。こういう国内外での環境づくりに日本が大いに期待されていることには、実は各分野別の支援と同時に、それらの統合としての環境づくりこそが、求められているのではないか。
 いま全国各地で、都市再生が話題になっているが、それだけでいいのだろうか。東京でも環境の危機は迫っている。海抜0メートルの地域にカミソリ堤防では地震だけでなく、大雨、洪水に安心できる訳がない。同じような洪水被害のニュースは気候の異変だけでない。そうした解決策として既存都市だけでなく、延長七千キロの海岸線を含めた見直しも加えられてよい。
 長い海に囲まれた日本は、法的緩和によって広く市民の利用が考えられるようになった。海岸都市は海面を広く利用でき、短期間の建設が経済的にできるので、ヨーロッパの地中海岸やアメリカの東西海岸に、マリーナや観光都市が急速に増加し、健康的な都市づくりが進んでいる。
 こうした海岸都市の実現においては、日本の優れた造船技術によって、ドックでブロック化したものを、海上輸送して組み立てるといった、これまでにない建設の可能性がある。

 自動車産業でいえば、デザインや性能もさることながら、世界に先駆け、ハイブリッドカーなどを開発し、低騒音、低震動、低排気ガスを実現している。これにより、建築の内部にも自動車が入り込み、身障者や老人の生活を支援できるようになってきた。
 すでにサンフランシスコの高層ホテルでは、客室のそばまで、自動車で乗り付けられる。大津のショッピングセンターでは立体駐車場と接続して、緊急時には車のスロープで避難できるようになっている。こういう自動車を取り込んだ建築の方がむしろ安全になってきたし、能率的な自動車都市はこれからである。
 また、ロボットは早稲田大からワボットという名称で研究が始まって以来、いまや生産から介護、救援、警備、清掃、メンテナンスまで拡大し、環境づくりになくてはならない存在になってきた。
 エレベーターから、磁気浮上の高速鉄道技術と、その運営システムで世界に高い評価を受けている。また、地下自動掘削装置によってドーバー海峡の英仏トンネルが実現したし、吊橋技術は本四連絡橋、都市内の高速自動車道、日本の技術はすばらしい。
 超高層建築でも欧州とトップ争いをしており、耐震、免震、制震など各種の開発で独走状態にある。民間企業で進めているハイパービルディング研究でも、千メートルの超高層立体建築具体的な実現段階に入っている。政府の研究でも二十五年も開発してきた人工土地という環境づくりのインフラストラクチャーはわが国独自のもので、この計画が熱帯研究所として一九九二年のブラジルの地球環境サミットで提案されている。

 これらの例で気づかされるのは、日本の先端的産業、技術の開発とそれらの統合による比類のない能力で成し遂げられていることである。それだけに、いつまでも建築、土木といった産業別でなく、自動車、造船、交通、家電、情報通信のほか、あらゆる産業が境界を超えて結集してこそ、次世代の環境づくりに役立つのではないか。
 日本はそれに必要な実績を持ち、それらを総合する人材を持っている。その上、資源の有効利用、再利用技術からエコ環境までの歴史的、文化的背景がある。こうした蓄積を有効に生かせるサスティナブルな環境づくりは、日本の得意とするところである。
 ここに世界に先駆けて地球環境問題を取り上げた、京都議定書の最大の意味があろう。その兆候が愛知万博で示されるはずであるが、わが国がまだ、これぞ二十一世紀の人類の理想とする環境だといえるものを実現していない。持てる力を発揮して、二十一世紀の環境づくりに取り組むのはこれからである。その条件の第一歩が膨大な経済的資産のストックである。(菊竹清訓)


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