「ふるさとづくり」こそが日本再生の道
愛知万博から発信したいテーマ

≪経済、歴史、環境の拠点≫
 二〇〇五年日本国際博覧会(愛知万博)の開幕が一年後に迫った。この機会に、博覧会にかかわる一人として内外から寄せられた多くの質問に答えることにする。
 なぜ愛知、中部地方で開催されるのか。そしてなぜ二十一世紀初の万博が日本で開催されるのか。その答えは水谷研治氏の著書『世界最強名古屋経済の衝撃』に明らかにされている。最大の理由は、日本の強力な中小企業集団の集積地であること。この基盤の上にトヨタ、ホンダ、ヤマハなどから、巨大宇宙産業までを生み出した−と指摘している。万博を機に成田、関西空港に匹敵する中部空港もでき、交通のネットワークは多彩かつ強力である。
 歴史的には伊勢神宮を頂点に信長、秀吉、家康による天下統一と、四百年の江戸文化がここから始まっている。背景となる自然環境も、豊かな森と肥沃な平野が広がり、揖斐、長良、木曽の三大河川が海にそそいでいる。ここに日本の美しい景観がパーフェクトにつくられているのは誰もが認めるところであろう。これらの点を総括すれば中部地方は経済的、歴史的、環境的に日本のよき「新しいふるさと」の模範となる潜在的要素がある。

≪21世紀は自然回復の時代≫
 田中角栄首相の日本列島改造論で、日本の工業化、都市化が一挙に進んだが、他方でふるさとの喪失となったことは否めない。竹下登首相はこのことを憂い、ふるさとの復活をとなえ、大平正芳首相は田園都市国家構想を提示した。歴代の首相はふるさとづくりを目指したのだ。これは、総務省の麻生太郎大臣に引き継がれている。
 日本再生のキーワードは「ふるさとづくり」であると言って過言ではない。もちろん、日本のふるさとは全国各地に残っている。佐賀があり、佐渡がそうだし、仙台もある。とりわけ中部地方は極めつきの魅力がある。今まさにふるさととは何かを深く各地域で考える時代であると思う。
 私は、今度の国家的プロジェクトはこの延長だと思っている。京都から地球宣言をしたわが国としては、アジアと一緒になって環境について考えていかなければならない。日本本来の生活における質素、健全、勤勉さ、そして万博を機に尾張気質に触れ、愛知が美しい自然と魅力ある文化によって、新しい日本のふるさとづくりをリードすることを大いに期待している。
 また、テーマとしてやや分かりにくい「自然の叡智」がなぜ選ばれたかもよく問われる。二十世紀の発展は都市が自然を破壊しつづけた。今、自然の回復、さらに、環境を守る上で拡散防止につなげていかなければならない。
 自然に学ぶというテーマこそ、地球的課題であり、人類滅亡を避ける課題ではないかと理解している。日本ならびにアジアも、万博を通じてより多くの人々とともに、自然の尊厳を学び、人類生存への挑戦ととらえることが重要だと考えている。

≪技術開発に役立つ伝統文化≫
 私の専門である建築では万博のテーマが、成果としてどう表れるか。多少甘い希望だがふれることにしよう。 基本的には、更新建築というわが国の伝統的サスティナブルな建築の考え方をベースにして、資源利用や再利用を考えた会場計画に取り組んできた。具体的には資材のリサイクルはもちろん、パビリオンは解体、移設して公共施設、学校、診療、民間施設などに転用できるように考えている。ループ(回廊)は歩行者のデッキとして都心再生に役立つだろう。
 転用は会場内や中部地方だけでなく、全国に広く用いられるようにする。もし海外からの申し込みがあれば、再利用の機会の拡大を考えたい。さらには地震のイランや、戦乱のイラクなどにも万博施設を転用して、支援できるように幅を広げられたら素晴らしいことだ。
 建築に限らず衣服、道具など日本の文化は、一回性で終わるのではなく、繰り返し利用できるようにいろいろな技術開発が行われてきたし、伝承されている。この日本文化は新しいふるさとづくりにもつながるもので、そう考えると、万博の成果は少なくとも、世界各地で今後百年は持続するような性質のものだと思う。そういう考え方の建築が万博で採り上げられていることを知っていただき、是非協会に再利用の申し込みをしてほしい。

 万博は「ふるさとづくり」の国家的シンボルとして、わが国の四季の美しさ、ふるさと文化の魅力を見てもらいたい。(愛知万博プロデューサー・菊竹清訓)

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