東京湾に新しい「空港都市」を建設

ー空港でジョギング、国際会議出席もー

≪遅れてきた未来空港≫ 

 日本の第一印象は空港で決まる。すなわち空港に未来が欲しい。当然、東京は日本の活力を示すものであってほしいので、東京湾の空域をもっと生かした「新国際空港都市」という発想も検討に値しよう。

 周辺の諸外国を見渡せば、中国やロシア、台湾、韓国などではそろって空港が新設され、香港、タイ、シンガポール、オーストラリアなどアジア地域の空港も立派に整備されている。そう考えると、今から東京に新空港を設けるのはいささか手遅れの観がある。しかし、遅れた分だけ、より本格的な未来空港をつくる好機ではないかと思う。
 昭和62年に、運輸省と一緒に欧米の空港を視察する機会を持った。諸外国の空港設計者にもヒアリングをして、「21世紀をめざした空港の将来像」について、長尾義三委員長を中心に、日下公人氏や能村龍太郎氏ら、事務局のメンバーで議論し、報告書を提出した。当時のターミナルビルの目標は、乗客の上下移動をなくし、人と荷物がレベル別に航空機にアクセスし、チェックイン後15メートル以内で航空機に搭乗できるのが理想だった。一般的に、航空機とターミナルビルは常に相互に変化する関係にあり、航空機の大型化に対応して、乗客の移動は階段ではなくブリッジになり、増便にはバスで対応するようになった。

 国際空港の場合、各国で搭乗システムが違うと乗客は迷うので、システムの共通性が強く求められた。その結果、荷物にタッグをつけ、行き先・航空会社別にベルトコンベヤーで仕分けられ、まとめて積み込むようになった。

≪最短の移動で搭乗可能≫ 

 発着便が増えるにつれ、混雑回避のために出発・到着便の乗客ルートを上下階に分けるなど、「機能更新できる建築」が空港ターミナルビルの条件になってきた。こうした「更新建築」はもともと日本の伝統でもある。
 一方、乗降客や手荷物の検査が厳重になり、荷物や衣服をエックス線で検査するため、セキュリティーチェックに時間を要するようになった。また、トランジット客のゲートラウンジ間の移動が増えてきたので、臨時のゲートや長時間の待ちスペースも必要になってきた。

 さらに最近では、ターミナルのゲート(出入り口)を多数とり、搭乗便の時刻に合わせてコンピューターとナビを連動し、ゲートを指定できるようになった。バスやタクシーが指定ゲートに着いたら、そこですぐ荷物の手続きをし、扉直近のカウンタ‐でチェックインすると目の前の搭乗ゲートラウンジに導かれ、ブリッジを通ってそのまま飛行機に乗り込めるようになってきた。これなら搭乗便を間違えることもないし、荷物が紛失するといった事故も防げる。何より多数の乗客を短時間で機能的にさばくことができる。

≪あらゆる都市機能持つ≫ 

 欧米では、新しい空港ターミナルへの改築が既に始まっていて、このシステムと高速鉄道や地下鉄、バスなどの接続が進められている。さらに、ターミナルビル内にホテルやオフィスはもちろん、展示場、会議場、ショッピングセンターなどあらゆる都市施設がどんどん組み込まれるようになり、ドゴール空港(仏)やヒースロー空港(英)では既に運営され始めている。ターミナルラウンジには、パソコンやビジネスサポート、マッサージチェアなどを備え、リラックスルームや子供のプレールーム、救急医療室なども設けられている。

 つまり、飛行機を利用する人々のニーズが変化し、その行動はもはや空港から母都市に出かけるというより、例えば国際会議のために、世界中から集まってきた人々が空港内の会議室でいきなり会議に出席し、空港内のホテルで食事を済ませ、時差をとるためジョギングやプールで運動したりして緊張をほぐし、そのまま帰国するといったこともできるようになってきた。日本からの会議参加者も空港ターミナルに集まってくるわけで、こうなれば、『空港都市』のイメージに近づいてくる。
 今月13日付本紙によると、羽田空港の4本目の滑走路建設工事着工が決まり、平成22年10月から供用開始されるとのこと。アジア路線が拡充されそうで、喜ばしいことだが、さらに相当思い切った改変が必要である。

 未来の東京の空港は、アジア最大の経済文化と国際交流の活動拠点として、世界の新しい空港都市をめざして進んでもらいたい。その力が日本にはある。

 2007年3月21日[産経新聞正論] 建築家 菊竹清訓


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